最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)777号 判決 1949年6月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人山根静人同矢部善夫同高橋吉家の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
辯護人山根静人上告趣意第一點同第二點について。
しかし、原判決が證據として擧示した第一審第二回公判調書中の被告人の供述、並に第一審第五回公判調書中の粕谷ツルの證言によれば、被害者粕谷方は君福という看板で待合業を營んで居り、被害家屋は粕谷ツルが住んで居る母屋とは別棟で所謂離れではあるが、同人の營業用に使用しているもので同建物には押入のある座敷があり、其押入には常に寢具を準備してあって被告人も同建物内に數回寢泊りした事実、並に犯行のあった晩も同離れには一人の客が來て使用した事実を認め得る。以上の事実により、同建物には晝夜間斷なく人が現在するとはいえないが粕谷ツルの經營している待合業の爲め日夜人が出入し、且つ起臥寢食の場所として使用している建物であることを認め得るから、被害建物は現に人の居住に使用して居ることの證據がないとはいえない。そして原判決は擧示の證據によって被害家屋は人の居住に使用している家屋であると認定したのであり、前説明のとおりその認定には何等法則に違反するところは認められないから、判示事実に對し刑法第一〇八條を適用したことは當然であって、所論のような擬律錯誤はない。從って論旨は理由がない。
(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑事訴訟法第四四六條により主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)